第43章 【ホワイトデー話その2】Lovers
やがて叶はそろそろと、宗次郎の顔を見つめ直す。
「いいのかな…?もらってしまって…」
「はい、どうぞ。」
「……ありがとうございます。」
「…ふふっ、何かしこまってるんですか。」
「何よ、そんなにおかしい?」
「ええ、まあ。」
叶の手に渡った可愛らしい包み。
徐々に顔を綻ばせていく叶を宗次郎は満足げに眺めていたのだけれど。
「…あのね。」
──何か思い至ったように声をかけた叶。
「はい?」
「……お返しじゃなくて。私もね、宗次郎のこと大事だから…
何か欲しいものない?なんでもいいよ?」
じっと見つめられれば。考えないわけにはいかない。
「そうですねー…」
どう、したらいいか。
目線を外しゆっくり考えてみたけど。
「……」
「…じゃあ。
──はい、これで。」
「えっ?」
「…いえ、なんかしてみたくなっちゃいまして。」
そっと頭に手を乗せられ、優しくなぞられる。
心なしか楽しそうにしている宗次郎。
「…触りたかったの?」
「……いいじゃないですか、別に。」
照れ隠しなのか、幾度となく被さる手のひら。
それだけなのだけれど、叶はどこか心地よかった。
「もちろん、いいけど…ちょっと、くすぐったい…」
「照れてます?あ、寝癖発見。」
「発見しなくていい。…無駄にドキドキする。」
赤くなりながら漏らした一言。
目ざとく宗次郎は反応し、叶に顔を近付ける。
──目と、鼻の先。
「本当ですか?それは本望ですね。」
彼はくすっと微笑んだ。
Lovers
(“僕の”って実感してみたかった。)