第7章 お気に入りの玩具
「…全く、何なんですか、あなたは。」
四乃森さんを部屋に案内して戻ると、叶さんはさっきの場所でまだ立ち尽くしていた。なんだか呆けた顔をしています。
……元々呆けた顔が更に呆けているのだから見るに耐えない。
先ほどのやり取りも兼ねて余計にイライラするなぁ。
「叶さん聞いてます?」
「……あれ、宗次郎?何か言った?」
「言葉も通じないんですか。」
「何よ-、いじわる。…そうそう、それよりね!」
叶さんは無駄にキラキラ光る目でこっちを見た。
なんだか嫌な予感がする。
「…なんですか?」
「四乃森さんって、かっこいいよね~♪素敵!」
声を弾ませて……また何かくねくねしだした。
「何かの病気にかかりました?」
「強いて言うなら恋わずら」
「一瞬で死にたいですかー、それともじわじわと死にたいですかー。」
「いやいや、聞いてよ!」
「戯れ言に付き合ってられませんよ。」
「だって四乃森さん、美形で-、目元がキリッとしててー。」
「あなたも人の話聞いてないじゃないですか。」
「背が高くてー…!」
「…」
「真面目そうで大人な感じがすっごく素敵♪」
「全部叶さんにない要素ですね。」
「あの、幸せな気持ちぶち壊さないでくれません?それはさておき、宗次郎!」
…ああ、なんだか面倒くさくなりそうだなぁ。
四乃森さんってどんな人なの?どうしてこんなところに?
志々雄さんが客人だって言ってたけど、どれくらい滞在するの?
お味噌汁は赤と白どっちだろう?それとも合わせ?
大きな刀持ってたけど、やっぱりとっても強いのかな?
宗次郎は四乃森さんとよく話すの?親しかったりする?
──どうしたら、四乃森さんと少しでもお近付きになれるかなぁ?
……ああ、面倒くさい。
「夜這いでもかけたらどうですか。」
「よっ!?よよよ…よ、ばっ…!」
うん、想像出来たけど。やっぱりこの性格なだけあって、叶さんは初心(うぶ)だったらしい。
真っ赤になってわなわなと震えてる。面白いなぁ。