第43章 【ホワイトデー話その2】Lovers
if…夢主がバレンタインデーに宗次郎に何も出来なかった場合のお話です。
「宗次郎。」
「はい?」
呼び止められ振り向く宗次郎に、叶は満面の笑顔で両手を差し伸べた。
「んっ。」
「は?」
宗次郎は思わず目を見開いた。
けれど、さらに叶はぴょんぴょん、と体を弾ませて首を傾けて言った。
「だから……ほれ。」
「はあ?」
「今日、あれじゃん。ホワイトデー!」
「だから?」
宗次郎の言葉に叶は残念そうな表情を浮かべる。
「えー…?何かくれないの?お返し…」
「え?だって叶さんバレンタインデー何もくれなかったじゃないですか。」
「……あ、あれ?そうだっけ
…あ。そうだったわ。」
目を泳がせる叶。
「酷い人ですね。自分はねだるだなんて。」
「たしかに…ですよね。」
何とも言えず俯いた叶の顔を宗次郎はそっと覗き込み、そして笑いかけた。
涼しげだけれど、人懐っこい宗次郎の笑みにその意図を汲みきれず、叶は何度か瞬きして目前の宗次郎を見つめる。
「へ…?」
「──なんてね。」
にこにこと微笑みかけられ。
「はい、叶さん。」
小さな包みを差し出された。
「え?これは…?」
「たしかに叶さん…忘れてたみたいですけど、最近志々雄さんのおつかいしたり、先月はなんだか忙しそうで色々頑張ってたみたいだし。」
「え…」
「それに“もらった”、“もらわなかった”じゃなくて…叶さんを大切に思ってるからその印です。受け取ってください。」
えへへ、と少し照れながらはにかんだ宗次郎。
かあっと頬に熱が集まっていく。けれど、叶はどのような顔をすればいいかわからなかった。
「…なんか。」
「はい。」
「すごく申し訳ないんだけど…」
「え、そんな言葉知ってたんですか。」
「むかつくなぁ。」
一目睨んで、すぐまた悩ましげな表情に戻った叶を宗次郎はあたたかな瞳で見つめていた。