第42章 【ホワイトデー話その1】ハートを装って
…喜んでくれるのは嬉しいんですけど、なんかこう…どんな顔をすればいいのかわからない。どう反応したらいいのか…
(ああもう、なんだか居たたまれない…)
「…あの、いつまでもしつこく嬲らないでください。」
「え!?」
何のこと?みたいな、驚いたような声を上げられたけど…
「仕方ないじゃないですか。余裕ないんですから…」
「…そっか。これ、頑張って選んでくれたんだね?」
思いがけず図星を刺されて、一瞬目を見開いていた。
「…なんかすごく癪だなあ。」
「…なんで不機嫌になる??」
「……叶さん相手に何を正直に喋ってしまってるんだか…まあ、そういうことですけど。」
「…いいと思う、よ。私は…嬉しい気持ちが一番大きいかな。」
えへへ、と声を弾ませながら、こちらを見つめる。
「…ありがとう、宗次郎。…すごく嬉しかった。」
照れながら微笑んだ彼女。
思わず僕も笑顔に戻っていた。
ハートを装って
(慣れない愛情表現)
『わあ、クッキーだ!しかもこれもハート型!』
『一々騒がしいなぁ。黙って受け取ってください。』