第42章 【ホワイトデー話その1】ハートを装って
──満面の笑みを浮かべた叶さん。
「宗次郎、ありがとう!」
「…どういたしまして。」
差し出したそれをまっすぐ受け取ってくれた。
──正直、その光景を目にしただけで…
(それだけでホッとしたかな…)
そして大方報われた気になるのだけれども。当の叶さんにそんな心の内が知られるのは、やはり少し気恥ずかしくて。
「…なぁに-?なんかまた意地張ってるでしょ?」
…思ったそばからめざといなぁ。
「自惚れないでくださいね。叶さんにそんな労力かける趣味はないですよ。」
「ほら、それが意地ってものじゃない。」
「あれ。伝わってないですね?」
「いつもみたいにニコニコしてるけど、なんか違う気がしたんだもん。」
ニヤニヤしながら得意気にそう言う叶さん。
──叶さんといると出て来てしまう意地…もはや癖なんだろうな。そう思わざるを得ない。
(…でも、たまには。)
「でも所詮は…口に出してみるだけですよ?」
口をついて出た言葉に呆気に取られた顔をする彼女。
「えっ、なにそれ。何かの当てつけ?」
「じゃあ、そう思っててください。」
“本当は口に出すほど嫌には思っていないんですけどね。むしろ”──そんなこと言えるのは…僕も貴女ももう少し大人になってからかな。
「てかさー。宗次郎。」
「なんです。」
「これ包装…ハート柄めっちゃかわいいんですけど…」
「!」
「あ!ハート柄からハート型の箱出て来た!」
「…一々騒がないと空けられないんですか。」
「いや、なんか意外性があって…」
──ええ、わざわざそういうのにしたんですよ。
そういうかわいらしいものを選ぶのって、それこそあからさまに叶さんのこと意識してるみたいで、恥ずかしかったですけど…
…でも、かわいい方が喜んでくれるのかなって思って。
「…叶さんの好みでしょ?」
「うん!すっごく好み!!」
「そうでしたか…」
「いやぁ…本当にかわいい!」
勢いよく頷く叶さん。