第40章 朝のひと仕事
「………」
「あ、さてはまだ寝ようとしてますね?」
「…おや…すみ…」
あまりもの寝起きの悪さに呆れかえりながら、こちらもやや意地になり叶の体を揺さ振る。
「叶さんっ。」
「Z~」
「叶さんってば。もう、普段ろくに仕事しないんだからそんなに起きれないわけないでしょう?」
「ううう、うるさいな…」
耳を塞ごうとより深く布団に潜り込むものだから。
躍起になって、思わず彼女の上に馬乗りになってしまった。
「…へ?」
「叶さんっ、」
重みが気になったのか、ちらりと布団を捲った叶。
再び布団の中には逃がさないように、反射的に捲り上げて。現れたその細い腕を掴み上げて押さえ込んだのだけれど。
「あ…」
「あっ…」
はた、と目を丸くさせた叶さんと目が合った。
……ようやく自分の今の状況を客観的に理解した。言わずもがな、まるで叶さんに上から覆い被さろうとしているようで。
また間の悪いことに、現れた寝間着姿の叶さんも着物の前がやや乱れていたりするものだから。
思わずぱっと手を離したものの。あらゆる意味で内心かなり動揺していた。
「…すみません、これは…」
「お、お、お、起きます…!」
そそくさ、と慌てながら少し頬を染めてぎくしゃくと身を起こした叶さん。
こちらも自ずと、ぎくしゃくしながら彼女の上から身を退けた。
「…違いますからね?事故ですからね?起きない叶さんが悪いんですよ?」
「わ、私が悪うござんした…お代官様…」
「違うって言ってますよね?」
「え、えっと…お手を患わせたことはこの通り謝りますし…その、黙ってますので…」
「聞いてます?怒りますよ?」
「あ、なんならおはようのチューするんで機嫌をお治めくだせえ…」
「馬鹿言ってないで早く身支度してください。」
「は、はい~…!」
それから叶さんは少しだけ寝起きが良くなった。
朝のひと仕事
(おはようの…。いやいや、何を考えてるんだ僕は…!)