第1章 1
なんだかんだでわいわいと楽しく部室までの道のりを歩いてきた私たち。丁度1軍の部室の前に着いたので少し名残惜しく思ったが「じゃあまた」と別れを告げる。
すると向日がきょとんとした顔を私に向けながら「何言ってんの?お前もこっちだろ」と言って来た。「え?」と聞き返す間もなく向日は行くぞと私の腕を引く。
「ちょ、ちょっと」
私の言葉など聞いていない向日とそれを見て若干微笑んでる忍足。その笑みが不思議で忍足を見返すがいきなり腕を引っ張り投げられ部室の中へと放り込まれた。
うわっ・・!
少しよろけて1軍の部室に入ると「やっと来たか」とあまり聞きたくない声が聞こえてきた。
少し上を向くとそこには声の主、跡部が仁王立ちして待ち構えていた。
いつ見ても偉そうだな、おい
怪訝そうに跡部を見ると見下すように私を見て「お前たちを待ってたんだ、さっさとこっち来い」と言って奥へと行ってしまった。その後姿を睨んでいるとまた腕を掴まれ「ほら、行こうぜ!」と軽い足取りで軽やかに進む向日。
それでまた転びそうになったが、結局引きずられるように跡部が入って行った部屋までついていった。もちろん後ろに忍足もついてきている。
ガチャリッと部屋にはいるとジャージに身を包んだテニス部員が何名か椅子に座ってこちらを見ていた。一瞬身体がたじろぐが部員の一人に軽くあいさつされ、なんとかまともに返せた。
「つばき、こいつらが1軍レギュラーだ。ちゃんと顔と名前覚えろよ」
「お、おお」
「今日からお前は1軍のマネージャーだ。しっかり仕事しろよ」
「うん・・・ぅえ?!」
何とも奇妙な叫びを上げた自分に「なんだ聞いてなかったのか」と呆れた顔をする跡部。
「そらサプライズにしとかなおもろんないやろ」
「え!俺てっきり知ってると思ってたぜ?!」
私をよそに繰り広げられるトーク。全然面白みなんてないが、確かに驚いた。
「え?じゃあもう一人の子は・・」
「2軍についてもらうことになった」
「私、なんで一軍に・・?」
「何だ、不満なのか」
「いや、別に不満って訳じゃ・・」と呟きながら目線を床に向ける。
てっきり役不足かと思ってたから・・・・
少し、安心した