第1章 1
「・・・終わった・・」
うぅーんっ!と腕を天井へ向け、大きく背伸びをした。
やっと・・・。
終わったのだ。ドリンク作りが。
疲れた~と首をコキコキ鳴らす私だが、今日の仕事はまだ終わってはいない。今からコートに行ってタオルを選手分置きに行かないと行けないのだ。
あぁ・・今日はまだ終わっていない・・。
あー疲れるなぁと戸棚に昨日畳んで置いたタオルを取り出そうとしたが
「・・・あれ?」
無い
え
何故。
え、え・・。私・・昨日畳ん・・だよね?
え。嘘。無い。
タオルが無いことにヤバイと焦りと驚きと疑問が沸き、たらりと冷や汗がこめかみの方から垂れてきた。
「・・・どうしよう。」
さっき洗濯機で洗ったタオル共はまだ乾いてはいないはず・・。
それに予備のタオルもあるにはあるが人数が人数だけに予備に用意してあった枚数では足りない。
どうしようと焦っているガチャリとドアを引く音が聞こえた。
ビクッッと身体を強張らせたが、ドアの方を見るとそこには先ほど物干し竿の時手伝ってくれたあの男子がそこに立っていた。
彼は「・・お疲れ様です」となんとも読み取れない顔で私に挨拶してくれた。
当の私も「お、お疲れ様です」と返すが、タオルが足りない今、焦りと動揺を隠せなかった。
戸棚の前に立ちすくんでる私を見て彼が「あ、タオル持って行っておきました」と忘れていたことを思う出すかのように言葉を発した。
「え」
彼の言葉に目を見開いてしまった私。
「え・・・持って行ってくれたの?」
「はい」
焦ったぁああああああああああああ!!!!!!
本当に焦った。ヤバイ。これは殺されるって思ってしまった。ミスがあると締め上げられるという感じだし!!
テニス部!!
あ~~よかった~~と安堵のため息を漏らすと「・・なんかすみません」と謝れてしまった。
「いやいや!仕事が減って楽になりました!こちらこそすみません」
「・・・あの」
「はい?」
「別に敬語を使わなくてもいいです。俺、1年ですし」
そう言って頬を人差し指でかきながら彼はなんだか申し訳なさそうに言った。
そんな彼に「あ、うん。」と何とも言えない返事をした私。