第1章 1
振り返るとそこには男子生徒が立っていた。
男子生徒、とうか、テニス部のジャージを着た男子だ。
「何か?」と返すと「お手伝いします」と私の方に歩みながらそう言い放った。
「え?」
突然の一言で驚いてしまったが、彼の親切心を簡単に受け取るわけにはいかない。私はこれをするために入部させられた部員だ。
「いやいや、いいですよ。これは私の仕事ですし」
「・・俺も今日当番ですし、やります」
「当番?」
何の?と首をかしげると私の目の前まで来た彼が「2軍では交代で雑務をやっているんです。マネージャーは入ったのは聞きましたが、1人では大変でしょう」と私の横にある籠からタオルを持ち上げた。
とりあえず、「すみません」と謝って彼に続きタオルを物干し竿に干していった。
「・・・・・」
「・・・・。」
・・・辛い。
無言が辛い。
まじめに作業しているからなのか、無愛想だからか・・。
よくはわからないけど、とにかくこの空気は辛い・・・。
私も自分から進んで話す方ではないが、やっぱり同じ部員だし、会話は必要だろう。
ちらりと横でタオルを干している彼を見る。
私とあまり変わらない身長で髪型はなんていうんだ・・お坊ちゃん狩り?みたいな。
動くたびにサラリと動く髪がとても綺麗で思わず羨ましく思う。彼は多分2軍の選手だ。
先ほどの会話でそれっぽいこといってたし。それに無愛想。
最後の1枚を物干し竿にかけると「では、俺はこれで」と言い残してスタスタと戻っていってしまった。
私も油を売っている暇などなく、次の仕事に取り掛かるため部室棟に向かった。
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