第1章 あなたが生まれたこの日に
長い沈黙が降りる。
否定をしないということは肯定だ。
あの行動は、合っていた。
なのに、
「望まれれば、誰でもするのか。他の男でも」
義勇は、とても怒っている。
言われればする、というのが嫌だからか。
「義勇は他の人としてほしくないってこと?」
嫌だと言うのなら、絶対にしない。
「俺は──」
義勇はそれから、たっぷりと間を置いて、
「構わない」
と、険しい顔をしながら言う。
いや、構うでしょ、それ。
構わないって思ってる人の顔じゃない。
「そう」
建前を潰すわけにもいかないので、そう頷く。
本音は、他の人とはしてほしくないはずだ。
たぶん義勇が怒るほどに、大切な意味のある行為だったのだろう。
気にするな、と最初に言ったのは、
私が意味を知らないと予想したからで、
意味もわからないのにしても、仕方がないというところか。
なんとなく理解できたので、話を切り上げる。
「義勇」
「なんだ」
「鮭大根、たくさん作るね」
そう言うと義勇の瞳が、少しだけ煌めいた。
それを見て、自然と顔が綻ぶのを感じた。
さっそく取り掛かろうと立ち上がる寸前に──
「真白」
名前を呼ばれ、手を引かれた。