第1章 あなたが生まれたこの日に
目の前にいる義勇の口に、唇を押し当てた。
義勇の瞳が今まで見たことがないほどに近くて、
そして、相も変わらず綺麗だった。
まるで夜を映すような深い青に、
水面のように静かに揺らぐ青が混在している。
魅せられて、とらわれる。
咄嗟に止めていた息が苦しくなって、顔を離した。
これが、義勇の望んだものだろうか。
義勇の反応を伺う。
私の予想が当たっていて喜ぶわけでも、
外れていて、困惑するでもなく、
ただ目を見開いて、驚いていた。
「義勇?」
呼ぶけれども、反応が、ない。
何か、反応がほしい。
義勇はそのまま何も言わずに三度、緩慢なまばたきをして、小さく息をこぼした。
「意味をわかって、やっているのか」
そう問う義勇の声には、どこか怒りが帯びている。
意味?
口と口を合わせることの意味だろうか。
「知らない」
「意味もわからずに、やるな」
怒りの色を露にしながら粛々と注意をされるが、腑に落ちない。
「ほしいって言ったのは義勇だよ」
また唇が尖っていることを自覚をしながら、伝える。
理由ではなく、意味を問うということは、望みは合っているはすだ。