第1章 あなたが生まれたこの日に
体勢が崩れて前へと向かえば、
自然と義勇の胸に飛び込むこととなる。
受け止めた義勇は、そのまま私を抱きしめた。
人肌のぬくもりが暖かい。
腕の中で、彼の名前を呼ぶ。
「義勇」
「ああ」
「好きだよ」
「知っている」
義勇はいつだって、同じ答えを返してはくれない。
それでも構わなかった。
私の気持ちを知っていてくれるなら。
義勇の背中に、腕を回した。
軽く入れる力に、たくさん気持ちを込めて、
義勇に抱きつく。
少しでも伝わればいいな。
「真白」
名を呼ばれたので、顔をあげた。
「なに」
目が合ったので、義勇の瞳の色を見ながら微笑む。
何も答えない義勇の顔が、近づいてきて、
唇が、重なった。
身体の奥で、熱を持った何かが疼いた。
けれども、それを気に掛けることはできなかった。
離れた義勇が、
「今のは、忘れろ」
そう言いながら、
とても切ない表情をしていて、
泣きたくなるほど悲しい色を纏っていたから。