第2章 残酷
いつだって義勇の言葉には補足や注釈をつけねばならない。
頼む、と言われたものの何を頼まれたのか、さっぱりだ。
鬼について説明をすればいいのか、狭霧山への行き方を教えればいいのか、鱗滝さんの話をすればいいのか。
ただ説明をするだけならば、手早く済ませてしまえばいい。
そうしなかったということは狭霧山まで案内をしろ、ということだろうか。
此処からは、結構な距離がある。
土地勘のない彼が、辿り着くには苦労するかもしれない。
けれど、それに付き添っていられるほど、鬼殺隊は暇ではない。
一定の時間が経過するまで、もしくは何かしらの変化までは傍にいろということだろう。
「えっと、真白?」
彼に呼ばれたので、思考を中断する。
「なに?」
「狭霧山に向かう前に、俺の家族を埋葬したいんだ」
「わかった」
頷いてから、鬼を抱き上げると、慌てた様子で彼が言う。
「俺がおぶっていく!家まで山道を登っていかないとだし、真白は女の子なんだから」
「君、いくつ?」
「俺は竈門炭治郎だ」
年齢を聞いて、名前が返ってきた経験は初めてである。
しかし、義勇との会話で噛み合わないことや、足りない言葉を推察することに慣れてしまっている。
たぶん、君と呼ばれるのが嫌なのだろう。
「炭治郎は、いくつ?」
「俺は十三だ」
「私は十四」
「歳上だったのか」
失礼な。
「歳上だから、私が抱える」
「いや、真白は女の子だし、こんなに華奢じゃないか!禰豆子を抱えながら山道を歩かせるわけにはいかない!」
「もし鬼が──」
「禰豆子だ!」
炭治郎は、やけに名前に拘るやつだな。
「禰豆子が起きて暴れたら、炭治郎はたちうちできるの?」
そう口にして、気がついた。
ああ、なるほど。
禰豆子が起きてからの様子を確認してから帰還しろということか。
もし暴れた場合、眠らせればよいのだろうか。