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空っぽの箱庭で【鬼滅の刃】

第2章 残酷


 小さな唸り声がした。彼の意識が戻ったようだ。

 暖かくて、とても心地がよかったので、名残惜しいが仕方がない。
 羽織りから抜け出し、彼の元へ駆け寄る。

 起きる寸前に、彼は鬼の羽織りを掴んでいた。

 そして、目を開いたかと思うと、ぽろぽろと涙を流した。

「起きたか」
 声をかけた義勇に続いて、
「おはよう」
 と挨拶をする。

 とても驚いた表情をしてから、彼は顔をあげた。

 近づく私にすぐさま警戒して、妹を抱き寄せる。

 かがんで、彼の様子を見た。
 義勇は手を抜いていたし外傷はない。呼吸も正常だろう。
 まあ専門家ではないのだけれども。

 私がいた木の上まで意識が向いていなかったから、彼からすれば妹を殺そうとする敵が起きたら増えていたという認識なのだろう。

 強張った顔で、私と義勇を交互に見比べた。

「狭霧山の麓に住んでいる鱗滝左近次という老人を訪ねろ」

 告げた義勇の顔を、彼は真っ直ぐ見る。

「冨岡義勇に言われて来たと言え。今は日が差していないから大丈夫なようだが、妹を太陽の元へ連れ出すなよ」

 そう言うと義勇は、私の名を呼んだ。

「真白」
 振り返り、義勇を見る。

「なに?」

「頼んだぞ」

 なにを?

 取りつく島もなく、義勇は立ち去る。
 その姿に溜め息を溢してから、彼に向き直った。

 おずおずと、彼は私に聞く。

「妹を、殺さ…ないのか……?」
「うん」
 そう頷くと、彼は虚をつかれたような顔をした。

「義勇が殺さないべきだと判断したから、私も殺さない」
 
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