第2章 残酷
道すがら会話をしつつ、炭治郎の家へ向かう。禰豆子は私におぶられて、寝たままだった。
鬼について知っている限りを話をする。
炭治郎は時折驚いたり、ひたすらに頷いたりしながら聞いていた。
次に鬼殺隊について話をしていると、
「どうして、真白は鬼殺隊に入ったんだ?」
そう炭治郎から聞かれたので簡潔に述べる。
「義勇がいるから」
私には、みんなのように鬼を殺したいという願望はない。
ただ、義勇がいるから。
鬼殺隊に入れば義勇と一緒にいられるから。それだけだ。
炭治郎のように、鬼の妹を治すなんて目的も、親の仇を討つなんていう目標もない。
「へえ。冨岡さんとは昔からの知り合いなのか?」
「知り合ったのは三年くらい前」
「真白は、冨岡さんのことが好きなんだな」
「うん。わかる?」
「ああ、すごく伝わってくるよ」
それなら義勇に、少しでも伝わっていればいいのだけれども。
それから少し歩くと、炭治郎の家が見えてきた。
炭治郎の表情が曇る。
家の外から中へと広がる凄惨な光景を思い出しているのだろう。
「炭治郎は、家族が好きなんだね」
漂っていた哀しみの色が、きゅっと締まって色濃くなる。
「俺はみんな大好きなんだ」
そう言うと堪えていたものが、溢れたようだった。
「俺は、長男なのに。しっかりしないと、いけないのに」
炭治郎の頬に涙が伝う。
長男だから、という原理はよくわからない。けれども、炭治郎には重要なことなのだろう。
「妹の禰豆子は寝てるし、私は炭治郎の妹じゃない。今は長男だからって、泣くの堪えなくてもいいよ」
泣きたいのなら、泣けばいい。
泣き言をいえるのなんて、今のうちだけだろうから。
「それに好きな人が死んだら、普通は泣くものだよ」
私だって、義勇が死んだら、きっと泣くのだろう。