第2章 残酷
向かってきた鬼を気絶させた義勇の元へ行く。
傍につくと、
「悪かった」
そう声をかけられた。
さっき斬るのを止めさせたことだろう。
義勇が謝るのは、とても珍しいので、正直なところ面食らった。
私が大怪我を負う可能性があったからだろうか。
「うん」
短く頷く。
「大丈夫か」
「大丈夫。まだ鬼の力が弱かったから、骨も無事だよ」
「そうか」
わかりづらいけれども、ほんのりと安心したような色を見せる。
どうやら心配してくれていたらしい。
「義勇。この鬼の子、どうするの?」
「たけ」
私の問いに、義勇はたった一言そう答えた。
……たけ?
たけ、タケ──もしかして竹?
懐に入れてあった竹の水筒を取り出す。
今、身近にある竹はこれくらいだ。
義勇が何も言ってこないことから察するに合っているのだろう。
さて、『たけ』の一言は解決できた。
竹だ、竹で合っている。
私の問いは、この鬼の子をどうする、である。
それに対しての返答が竹。
……えーっと、起きたとき衝動的に人を咬まないように、口枷として竹を噛ませるという話だろうか。
それ以外の正答は何度考えても見つからない。
なるほど、義勇。
圧倒的、言葉足らずだ。
以前、しのぶさんに義勇は言葉が足りないから困ると話したら
「真白、あなたがそれを助長させているんですよ」
と、やんわり諌められたことを思い出す。
そんなつもりはないのだが、日に日に言葉が短くなっているのを感じる。
先ほど兄を鼓舞するためにあれだけ長文を話していた。
なのに、私の質問にはたった一言「たけ」である。
この差はなんだ。