第2章 残酷
竹の水筒の飲み口にしてある栓を引き抜いて、持ち手の為に巻きつけていた朱色の布をほどく。
「義勇、反対に穴開けれる?」
「ああ。そのまま持っていろ」
義勇は剣は器用に竹の真ん中を、くり抜いた。
飲み口の穴から布を入れ、今作った穴から出して、竹の中に布を通した。
それを鬼の子の口にあて、布をうなじ付近で少しきつめに結ぶ。
簡易だが、これでいきなり人を咬むことはできない。
落ちていた淡い青色の羽織りを義勇が拾って持ってきたので、鬼の子へ着せる。
雪の上に転がっていたので、ひんやりと冷たい。
鬼の子を、気を失ったままの彼の元へと運ぶ。
彼の隣へ置くと鬼の子は、規則正しい寝息をたてた。
兄の気配を感じ取って安心したのだろうか。不思議なものである。
傍にある木に、もたれている義勇に近づきながら、話しかける。
「ねえ、義勇」
「なんだ」
「隊律違反だね」
鬼殺隊が、鬼を殺さない。殺せないのではなく、殺さない。他の隊員──特に柱に知れたら何を言われることか。
「報告するか」
「しないよ」
義勇の元まで行き、彼を見上げる。
目が合ったので、微笑んだ。