第2章 残酷
怯んでいた彼は、苦しむ鬼を見て、
「やめろ──!!」
そう叫ぶと、手近にあった石を拾って義勇に投げる。
顔に向かってきた石を、義勇は易々と払いのける。
その間に彼は転がっていた斧を拾い、更に石をまた一つ手に取った。
視界が塞がれるほどの強い風が吹雪いた。
そのせいで目に雪が入り、何度も目を擦ることとなる。
ごろごろとした感覚がとれたので、ようやく目を開く。
彼はどうやら手にした石を義勇に投げたようだった。
飛んできた石を義勇は避ける。あの速度の石ならば、当たることはないだろう。
彼は叫びながら義勇の元へ振りかぶった体勢で走っていくが──、
手にしていた斧がない。
「愚かッ!」
義勇は刀の柄で、飛び込んできた彼を叩いて、気絶させた。
違和感を義勇は覚えたのだろう。
そして、その違和感の正体にすぐ気づく。
「義勇、上だよ」
声をかけると、義勇は顔を上にあげて、視認した斧をすんでのところで避けた。
後ろの木に、斧が刺さる。
間一髪である。
声をかけずとも、義勇は気づいただろうけど。
彼が二度目に石を投げたのは、斧を空中に投げることを悟らせないため。
そして、自ら陽動となって義勇に向かっていった。
義勇に敵わないことを知り、それでも尚、勝つために策を練った。
自分が斬られたあとで、斧で義勇を倒そうとしたのだ。
予想以上に彼には、期待ができるかもしれない。