第2章 残酷
「簡単な話だ」
義勇は説明を始めた。
もしかして、義勇は彼を納得させてから、鬼となった妹を殺すつもりなのだろうか。
「傷口に鬼の血を浴びたから、鬼になった。人食い鬼は、そうやって増える」
それも、鬼になったところを見た者がいないために、予想の範疇を出ないのだけれども。
「禰豆子は人を食ったりしない!」
「よくもまあ……。今しがた己が食われそうになっておいて」
「違う!俺のことはちゃんとわかっているはずだ!俺が誰も傷つけさせない!きっと禰豆子を人間に戻す!絶対に治します!」
そんなもの、希望的観測でしかない。
人を食わない鬼はいない。
それに、
「治らない。鬼になったら、人間に戻ることはない」
治った前例など、ない。
私よりも義勇のほうが、数多の鬼を見てきた。
家族が鬼になってしまった者の末路も。
「探す!必ず方法を見つけるから!殺さないでくれ!家族を殺したやつも見つけ出すから、俺が全部ちゃんとするから、だから、だから、やめてくれ──!」
荒唐無稽な話にも程がある。
「やめてください…。どうか、妹を…殺さないでください…!お願いしますお願いします……!!」
冷たい雪に、手をついて頭垂れ、彼は嗚咽をもらしながら平伏した。
酷い嘆願だ。
その様子に、義勇はみるみる怒りの色を帯びる。