第2章 残酷
足跡を辿っていると、崖のほうへと続いていた。よろけた、のだろうか。
下には、人が背中から着地したような跡がある。
しかし、近くに人影は見当たらない。
「このまま降りると着地したときに、埋まりそうだね」
飛び降りて死ぬことはないだろうが、雪というのは厄介で、着地の衝撃で深く埋まってしまうと抜けることは難しい。
「迂回する」
「わかった」
そのまま、真っ直ぐに山道を下っていく。
崖の高さが低くなったのを確かめて、飛び降りた。少し埋もれたが、この程度ならばすぐに抜け出せる。
先ほど見た着地点へ向かう。
「あれかな」
危惧していた事態が、現実となっていた。
やはり鬼となり、人が襲われていた。
男に女の鬼が覆い被さって、男の差し出す斧の柄を、女は咥えさせられている。
食われないように抵抗しているということは、男は生きている。
せめて、彼だけでも助けなければ。
義勇が足早に近づく。
成りたての鬼だ。義勇は遅れをとらないだろう。
私は変わらない足取りで向かう。
義勇が鬼の首を刎ねようと刀を振りかぶった瞬間──
襲われていた彼は、鬼を庇った。