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FFⅨ Hi Betty! (Long)

第3章  tease


実際のところ、言ってはいないが嘘はついていなかった。

「…ごめんってば。だから、そうやってからかわないで。」

彼女は首を捻り、僕の方へと顔を向ける。
今にも頬と頬が触れそうな距離だった。
こういったやり取りはアレクサンドリアでもよくあることだった。
ブラネの癇癪でできた火傷や打撲、切り傷を僕が治してやり、ついでに抱きしめたり、髪を撫でたり、時に甘い口説き文句を囁いたりしていた。
彼女はそれをからかっていると思っているようで、今日に至るまでほぼ全てがあしらわれてきた。
最初こそは悪戯心だったが、案外、本当に思うことを言っているというのに。

「まだ、からかってるだなんて言うのかい?僕は、興味のない人間を可哀想だという一心で引き取れるほどお人好しじゃないんだけどねぇ。それに興味があるってことは全部欲しいってことだよ。…ねぇ、僕が欲しいものって何だと思う?」

僕は彼女の腰のラインにゆっくりと手を滑らせた。
ほんの少しやり返してやるつもりだった。
彼女は手から逃れるように、僕の方へ身体を向け、驚いた目で僕を見上げた。
そこまでは予定通りだった。
だが、その視線はすぐに逸らされ、遠くなのか近くなのかわからない、どこか宙の一点に落ち着いた。
僕の考えていること、自分の状況、酷く肌に馴染む生温い空気、全てを吟味しているかのような目だった。
いやな予感がした。
僕の胸の内も知らず、彼女は口を開いた。

「……好きにしていいよ。そうでもなきゃ、クジャが私といるメリットはないもの。」

予感は的中だった。
何故、聞きたくないと思うのかはわからない。
じゃあ何か得があるのかと言われてもわからない。
さも普通のことでも言わんばかりに、悲しみすら浮かべない彼女についてもわからない。
思っているよりもずっと彼女は遠くにいるのかもしれなかった。

「そういうのは、簡単に許すものじゃない。」

何を思うわけでもなく、自然と彼女を抱きしめていた。
そもそもは自分で蒔いた種だと思うと、我ながら行動がちぐはぐだが、腕の中の彼女の体温が温かかいままなのがわかって安心した。

「からかってるって言うから、本当にからかってみたんだ。君が悪いんだよ。」
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