• テキストサイズ

FFⅨ Hi Betty! (Long)

第3章  tease


僕は彼女とナインボールで勝負をすることにした。
一から九までのボールを順番に落としていき、最後に九番を落としたら勝ちというゲームだ。
彼女は昼からずっとこれを一人でやっていたらしい。

「…よく飽きもせずに。まあそれはいいとして、僕が勝ったら舞踏会に来てもらおうかな。」

僕は来週、とある貴族から舞踏会に招待されていた。
シェリーも連れて行くつもりでいたが、彼女を誘えば多少難色を示されたとしても了承を得られるのは想像がついた。
僕が言えば命令同然の扱いになるのだ。
たとえ、僕がそうすることを望んでいなかったとしても、だ。

「舞踏会?」
「こうでもしないと一緒に来てくれないだろう?」
「さすがにそこまで頑なじゃないわ。どうしてもなら我慢する。」

案の定だった。

「それじゃあ、面白くない。」
「ナインボールで勝ったら面白くなるの?」

揚げ足取りもいいところだ。
勝ち戦にわざわざ負けの可能性を作る僕もどうかとは思うが。

「…まったく、自由なものだよ。昼以降、姿を見せないと思ったら玉撞きに夢中。僕の誘いにも興味なしだ。」
「ごめん。……ティータイムを忘れてたの、少し根に持ってるでしょ。」

僕が話している間にも、彼女は散り散りになったビリヤード台のボールを並べ始めていた。
今、彼女の適度に反った細い腰を捕まえ、台の上に組み敷いたらどんな反応をするのだろう。
五番ボールを見ていたみたいに、食い入るような目で僕を見つめるのだろうか。
それとも、困ったように頬を赤らめるのだろうか。

どうだろうね。」

ビリヤード台の上で飾り立てられるかのように、身体の自由を奪われる彼女の想像とは裏腹に、気づけばボールは綺麗な菱形に並んでいた。

「そんなに紅茶が飲みたかったなら、別に他の人に頼んでもよかったんじゃないの?」

想像と現実の乖離は激しいようだった。
僕は彼女の背中から肩にかけて手を滑らせ、もう片方の手はビリヤード台の縁に置かれた彼女の左手に重ねた。
そして、僕の懐で硬直する彼女の耳元でこう囁いた。

「僕は紅茶が飲みたいんじゃなくて、君が恋しいって言ってるんだけれど?」
/ 30ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp