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FFⅨ Hi Betty! (Long)

第6章 dress up doll


私は見慣れない天蓋付きのベッドの上で目を覚ました。
陽の光が目に刺さる中、昨晩の記憶を辿るのにさほど時間はかからなかった。
クジャとビリヤードをして、ワインを飲んでいたのだ。

-それから…。

不幸なのか幸いなのか、私の記憶は鮮明だった。
記憶が蘇れば蘇るほど、臓物が冷えていくような感じがした。
私は自室に帰る前に眠ったのだ。
ビリヤードルームのソファ、クジャの胸に頬を埋めてそれはもう心地よく。
眠った後のことは、当然だがわからない。
ここは恐らくクジャの部屋で彼が私をここに運んだと考えるのが妥当だろう。
彼に会ったら、どんな顔をして話せばいいのだろうか。
私には心の準備が必要だった。
私は天蓋のカーテンを掻き分け、ベッドを降りる。
できることならクジャが戻る前にここを出たかった。
そして、ドアノブに手をかけた瞬間、扉が手前にもっていかれた。
私はまだドアノブに力をかけていなかった。
つまり、間に合わなかったのだ。

「おはよう、シェリー。よく眠れたかい?…って、聞くまでもないんだけどね。」
「…おはよう。えーっと…やっぱり私、そのまま寝ちゃったんだ。」

期待はしていなかったが、昨日のことは夢だったという僅かながらの可能性は潰えた。

「一応、起こしはしたよ。でも君が一緒に居たいって言うから連れてきたんだ。」
「………なにそれ、覚えてない。」
「半分寝ぼけてたからね。」

私は額を押さえた。
もう当分、酒はいらなかった。

「三千年に一回あるかないかくらいの親切をした気分だよ。だから君が無事に朝までゆっくり眠れたってわけさ。」
「ふぅん、そういう人なんだ。ほとんど奇跡に近いじゃない。」

そういったことには及ばなかったことには安心した。
私といて何も思うことがなかったということなのかもしれないが、それはそれで問題ない。

「我ながら驚いてるけど、たまには寝顔の観察もありかもね。…ふふ。」

彼は言いながら、思い出したように笑い声を漏らした。

「…え、なんかしてた?」
「それは内緒だよ。」
「……………。」

そういった行為に比べたら大したことではないが、あまり見られたいものではなかった。
彼は楽しそうだが、この件は掘り下げない方が幸せだと私の本能は感じていた。
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