• テキストサイズ

FFⅨ Hi Betty! (Long)

第4章  cheating


舞踏会への参加が決まってしまった。

クジャと私は先程までビリヤードで勝負をしていた。
一回戦目は勝負前の出来事が響いたのか、クジャにゲームを奪われた。
納得がいかなかった私は三回勝負を求めた。
二回戦は、なんとか持ち直して勝つことができた。
三回戦も私の方が有利だった。最後のショットが決まれば、このゲームも私のものになる筈だった。
しかし、そうはいかなかった。
私がボールの配置を確認している時だった。

「シェリー。」

クジャは私を呼ぶなり、頬に手を伸ばし、顔に掛かっていた髪を耳にかけた。

「その目、好きなんだ。僕も9番ボールになりたかったな。」

彼の方を向けば、私と目線の高さが同じになるように屈み、瞳を柔らかな三日月型にして微笑んでいた。

「…それで?」
「それだけだよ。」

意味がわからなかった。
私は気を取り直して、ボールの角度に集中することにしたが、見られているということに意識が向くと身体がそわそわして仕方なかった。
気持ちが落ち着かないまま、ボールに狙いを定めれば手玉は9番ボールの脇を通り過ぎた。

「…なんで?そんなの反則よ!」

絶対に外すはずなんてない。
彼に声をかけられるまでは、そう思っていたのだ。

「勝ちは勝ちだよ。精神修行が足りなかったね。」
「…信じられない。」

彼が悪びれる様子はなかった。
それどころか、くつくつと笑い声さえ上げ始めていた。

「…面白がることじゃない。」

酷く不満だった。
負けること自体はどうしようもないが、あれは勝てるゲームだった。
少なからず、私はビリヤードに対して一日の半分を費やす程度には熱量を注いでいたし、久しぶりに夢中だったのだ。

「君も怒ったりするんだね。」
「当たり前でしょ。私のこと、なんだと思ってるの?………あ、ごめん。」

言い切ってから我に返った。
これまで、クジャにこんな口を聞いたことなどなかった。

「なんだと思ってると思う?」
「…わからない。でも、ごめんなさい。少し悔しかったの。」

冷静になるにつれ、自分の大人気なさが心苦しくなってくる。
たかがゲームだというのに。
ただ、どこかすっきりもしていた。
ここしばらくは、気持ちがもやもやしてどうしようもなかったのだ。
/ 30ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp