第2章 ***
「お前の事だ…俺の為を思って勝手に身を引いたんだろうとも考えた」
「……、」
「だからこそ…俺はお前とちゃんと話がしたかったのに…」
それから…
手首の拘束を解いてくれた彼は、この2年自分が何をしていたのか順を追って話してくれた。
私が姿を消した後、社長令嬢との縁談はきっぱり断った事。
そしてその後すぐに自分も会社を辞めた事。
更に1年前、自ら会社を起ち上げ今はその責任者として新たな道を歩んでいる事…
「元々俺はあの会社に骨を埋める気なんて無かった…。やり甲斐もあったし、得るものは沢山あったがな」
「…それじゃあ……」
「そうだ…。最初からお前がくだらない気を回す必要なんて無かったんだよ」
「……、」
「お前には側で俺を支えてほしい…そう言うつもりだったんだからな」
「っ…」
彼の言葉を聞き、一度止まったはずの涙が再び溢れ出す。
私は顔を覆い、「ごめんなさい」と何度も謝った。
ひとりで勝手に突っ走って彼の気持ちを踏みにじってしまった…
そんな自分が許せない。
「澪…」
顔を覆っている私の両手を掴んだ彼が視線を合わせてくる。
その表情は先程とは打って変わって穏やかなものだった。
「…反省してるのか?」
「……、はい…」
「それなら…ちゃんと態度で示してもらわないとな」
ふっと笑った彼が瞼にキスを落としてくる。
「この2年間…俺は女を抱いてない。過労死寸前になるまで働いてたってのもあるが…お前以外の女を抱く気にはなれなかったしな」
「……、」
「だから…今夜はたっぷりその埋め合わせをしてもらうぞ?」
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