第2章 ***
「…キスだけで感じたのか」
「んっ…!」
くりくりと胸の頂を指で弄られる。
思わず漏れてしまいそうになる声をぐっと我慢した。
「その顔…そそられるな」
「もっ…、やめて下さい…!」
「やめてほしければ、俺の元に戻ってくると言え」
「出来ません…っ…」
「…何故そこまで頑なに拒む?」
「大和さんこそ…どうして今更……」
私たちが別れたのはもう2年も前の事だ。
もう少しで吹っ切れそうだったのに、何故今更私の前に姿なんか現したのか…
「…今更……だと?」
彼の声が一際低いものに変わる。
その表情も先程までとは違って…
「この2年間…俺がどんな気持ちで毎日過ごしていたかお前に解るか?」
「……、」
「一方的に"別れてほしい"と言われ、まともな会話も出来ないまま会う事も叶わなかった…」
「大和…さん…」
「このマンションだって何度も引き払おうと思ったが、いつかお前が帰って来るんじゃないかと思って…っ…」
悲痛に歪む彼の顔。
何事にも自信満々で、強気な彼が見せた初めての表情だった。
「ごめん…なさい……でも私はあなたにふさわしい女じゃない…」
「………」
「あなたにはもっと素敵な女性が…っ…」
そう言い終わる前に涙が溢れる。
この2年間溜め込んでいたものが堰を切ったかのように…
「澪…」
静かに呟いた彼は、そっと私を抱き締めてきた。
そして安堵にも似た深い溜め息をつく。
「…やはりそうだったか」
「…え……?」
「今の言葉で確信した…。お前が俺の前から姿を消したのは、俺に令嬢との縁談が持ち上がったからだろう?」
「っ…」
図星を指され何も答えられない。
それでも彼は構わず話を続ける。
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