第1章 #01
そうか?とあまり気にする様子もない影山。そう言えばこの人そういうのに無頓着だった。
まあ早着替えできる訳でもないし、気にしない方が勝ち……。オシャレしてないだけでめちゃくちゃダサいって訳でもないだろうに。たぶんだけど。
後ろから更にゾロゾロこっちに歩いてくるのが分かって、まずは状況整理が先だなと感じた。
影山とその友達が来た理由が全くわからないから。釣竿を持ってる訳でもないし、私のとこに向かってきたみたいだし。
初対面の男を前にして緊張もあるけど、若干怖さもあった。
「それでなんでこっちに?」
「昨日会っただろ?その事とか話したんだけど、さっき見つけたら皆が会いたがって……」
「私に……?」
「おう。迷惑だったら、わりぃ」
いや、迷惑ではないけど。私会いたがられるような人でも無いでしょ……?もしすごい美少女を想像して来てくれたのなら、逆に申し訳ないというか。
影山の知り合いだからって顔がいいとは限らないんだよね。
「えっと……自己紹介、するべき?」
「うんうん」
影山に問うと、隣の人が満足そうに頷く。後ろにいた男の人たちも私を囲むように広がって姿を現し始めた。
お、男だらけ……。しかも顔がいいのがいれば服装が明らかにチャラいのとか、ヤンキーみたいな集団じゃないですか……。
もちろん見た目だけで判断は良くないんだろうけど、ただの陽キャ集団とは雰囲気が少し違うんだよね。この中に影山がいることが意外。
「こいつ井上七世です」
「…です、初めまして」
影山が紹介してくれる。流石に人数が多すぎて緊張してたから助かった。
周りからよろしくー、なんて声がちらほら聞こえる。
初めましてではなくて?……よろしくまでする気はさすがに無いというか、違う世界線で生きてそうな方々というか。
ほら、そもそもそんな影山と仲良くないし。聞いてないかな?
おちょくってる訳では無いけど、脳内で早く帰ってくれていいんだよ?って風な口調で急かすと、逆に各々はコンクリに座るなどしてくつろぎ始めた。
まじですか……。
私の隣りには昨日と同じで影山が座る。昨日より少し距離が近い。周りはそれぞれで話し始めて、影山は私と話すつもりみたいだった。