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【HQ】ひと夏の幻影【R18】

第1章 #01


9時ごろ家に来た山下さんについて、海に向かった。家を出る直前、おばあちゃんに貰った水筒を歩きながらナップサックにしまう。

山下さんはクーラーボックスや釣り竿らしき筒を含めて荷物が沢山。私が一緒に行くせいでもしや余計重いんじゃ……?


「何か持ちます!」

「いやあ、えんよ。どうせ海すごい近いしねえ」

「でも」

「それに行きは軽い!帰りに荷物任せたくなるぐらい沢山釣ろうなあ!」


元気だなあ。山下さんの笑顔につられて私も活気づいてきて、大きく頷いた。

懐かしいね、大きくなったね、なんて話をしながらあっという間に海に辿り着いた。防波堤で釣りをするらしい。

初の釣り、どきどきする……!楽しみだ。


防波堤に着くと、山下さんは荷物をおろして準備を始めた。私には何も出来なくて戸惑いながら突っ立ってるだけ。

釣竿初めてこんな近くで見た……こんななんだ。へえ……。

おおまかにやり方を聞いたけど、釣りはとにかくじっくり待てとの事だから焦らず魚を待とうかなって感じ。

申し訳なく思いながら餌を付けてもらって、椅子に座って釣り開始。

初めて釣れる魚はなんだろうな……?


「あの、晴れてるより曇りとかの方が釣りに適してるって聞いたことあるんですけど」

「まあそうとも言うけどね、釣れる時は釣れるし駄目な時は駄目だからね。それに女の子連れてくるならいい天気の方がいいよなあ」


こんな季節じゃ暑いけどね、と付け足して山下さんはにっこり笑う。白髪混じりの額には既に汗が滲み始めていた。

空を見上げてみると太陽が眩しくてつい目を細める。日焼け止め塗り直さないとなあ。昨日よりも暑くなるみたいだし、体調にも気をつけないと。


それから1時間ほど経った頃。

チャポン……!

釣竿を海から引き上げると、尾びれが勢いよく水面を弾く音が聞こえた。ニヤニヤが止まらなくて、山下さんの方を見る。


「釣れた…!!!」

「おお!釣れたねえ!」


そんな大きくもないし珍しくもない魚だけど、本日2匹目とあってテンションが上がってしまう。1匹目を釣った時なんて、山下さんに写メ撮ってもらったし。

魚が針から外せなくて固まってる私の隣で山下さんは本日6匹目を釣り上げて、待っててなと順番に魚を針から外してくれた。
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