第2章 #02
びしょ濡れだ……。シャワー浴びた後だし、負けなくて本当によかった。
影山は私と幼馴染だってことをイジられて、なんだかもみくちゃにされてる。
よく考えるとこの中で一年は私を除いて影山だけ。いじられやすかったり、可愛がられやすかったりするんだろうな。
人数分は残りが足りない線香花火を特別にさせてもらって、最後まで花火を堪能した私。
誘ってくれて本当に嬉しかった。……恥ずかしいけど、皆が近くにいるうちに声をかける。
一対複数でお礼を言うなんて、形式張ってるみたいで恥ずかしい。改まっちゃうな。
でも後で一人一人お礼を言おうとしたら、手間がかかっちゃうから。
「今日は誘ってくれてありがとうございました。昼も花火も凄い楽しかったです」
「おう」
「こちらこそ」
ぺこり。頭を下げれば、代表して数人が明るい声で返してくれる。
最初は年上ってことで戸惑ってた敬語も、今ではお礼を敬語で言うことがむず痒く感じてしまうくらい。
ほんの少しの時間だったけど、色んな人と少しは親しくなれたような気がする。
黒尾さんとは……まあ、微妙だけどね。
することも無くなって、時間なんかの確認のために数人がスマホを取り出す。
時刻は十時の手前。そろそろ戻ろうと、準備し始めた時だった。
「……クロ」
「……!」
「「……」」
え……なに……。
スマホを確認してた研磨がいつもより若干はっきりした声で黒尾さんに呼びかけると、黒尾さんが何かに勘づいた様子を見せた。
周りの他の人たちも顔つきが真面目なものになって、場の雰囲気がガラッと変わる。
さっきまで騒いでたのに、どういうこと……?呼吸の音を立てる事すら緊張してしまこの状況は、いったいなんなの?
皆が何を察してどうして場の雰囲気が変わってしまったのか。気になるのに言葉を発することが出来ない。
私を入り込ませる隙間がない。刺すような雰囲気に……近づけない。
皆の視線の先にいる研磨の瞳から、スっと光が消えてくみたいに見えた。
今まで見た研磨の中で一番近寄りがたいと思わせる雰囲気をまとってる。表情だけじゃなくて、暗闇の中にいるからより一層……。
「スガから。……どうする?」
「指示任せた」
「わかった」
研磨と黒尾さんのやり取り。スガって何……。研磨が指示を出すって一体何を。