第2章 #02
私は何も知らない事に対して、ただただ困惑するしかなかった。
ねえ、どうしたらいいの……?
誰も私なんて眼中に入ってなくて、何か聞くために目線をキョロキョロと彷徨わせても、誰も私を見ようとはしない。
研磨の声にただ、耳を傾けるだけだった。
「指示の後すぐにクロと赤葦、方向はあっち」
「……」
「了解」
「サトリと英太が十秒後同じ方向」
「あいサ」
「わかった」
「貴大は俺について、その都度指示を出すから。影山はここに残って誰一人取り逃がさないで」
「……おーけー」
「おう」
研磨の指示の意味がわからない。そう考える暇も与えないほど、間髪入れずに研磨は次の指示を口にする。
「二口は七世を連れてクロ達と真逆に行って。……傷一つ付けさせないでね」
傷一つ付けさせないで。……その言葉が、ゆっくり、重く頭の中に流れ込んでくる。
研磨の瞳がギュッと堅治の方に向いて、有無を言わせない強い圧力が籠ってるみたいだった。
怖い……。私を連れてって、どういう……。
ーーーズリ……。
考えて理解出来る範疇を超えてそうだった。思わず砂浜の上を後ずさるようにすると、右手首をがっしり堅治に掴まれる。
「……!」
逃げるなよ。そう言われてるみたいだった。同じ言葉でも罰ゲームを嫌がった時みたいな、明るい声色で想像することはできない。
やっと自分がとんでもない状況にいるんじゃないかということだけ考えられた。
どうしよう、足が震えて……。
「行動開始して」
研磨の言葉に覚くんがまだ燃え尽きてないロウソクを踏みつぶして火を消した。まるでそれは開幕の合図みたいで。
風を切るように黒尾さんと赤葦さんが研磨の指示通りの方向に走っていく。
「いっ……!」
それとほぼ同時に私の右手は肩が抜けるんじゃないかという程強く堅治に引かれて、二人とは逆方向に走ることを余儀なくされる。
強い力で引っ張られすぎてその場に留まってることなんてできない。でも走っても堅治の速さにはついて行けなくて、どれだけ走っても腕は痛いまま。
手首も痛い。なんでそんなに強く?どうして私はこの方向に向かって走らされてるんだろう。
今日ほんの少し一緒にいただけじゃ、この人たちのことなんて全然信頼できてなかった。
ふと……違う世界線の人達で間違いなかったんだなって。