第2章 #02
緊張感と静寂の中、パチ…パチパチって少しずつ火花が弾け出した。すぐにそれは中くらいの花を咲かせる。
音を立てて放たれる閃光は、オレンジ色の雷みたい。ついゲームのことなんて忘れて、その様子に魅入っていた。
「綺麗……」
こんな小さい紙の棒なのに、ほかの花火とは違う。不規則に小さな輝きを悠々と見せている。
視界の端で誰かが線香花火を落としちゃったのを捕えて、私はゆっくり線香花火を堪能することにした。
何だか、静かでいいな……。
「あ……」
自分の分も終わってしまって視線をあげると、皆既に終わってたみたいで私の方を見ていた。
なんだ、結局誰も妨害なんてしないんじゃない。心配して損した。
バケツに一番近い英太さんが花火を回収するために手を伸ばしてくれて、私は身を乗り出すようにして渡す。
「お前の長かったな」
「勝ててよかったです」
「それで、負けは誰?」
京治が訊ねる。知らないってことは京治も最後の方まで残ってたってことか。
誰でもいいけど堅治あたりだったら笑わずにいられるかな、とちょっと悪意を込めて待っていると声を上げたのはその隣だった。
「俺だ。ちょっと行ってくる」
「ウェーイ!」
「飛雄男前ー!」
悔しがる素振りもなく、負けをあっさり認めるようにして影山は立ち上がった。
見えてなかったけどそんな早くに落ちてたのか。視界に入ったあたりだと、貴大さんとかじゃないかと思ったんだけど。
そういえばここで私と影山が最初に会った時も、負けて罰ゲームであの崖を登ってきたんだっけ?
ぼーっと影山を見上げていると、急に影山はTシャツを脱ぎ始めた。細くて引き締まった、腹筋の割れた上半身が露わになる。
「……!」
あまりに急すぎて恥ずかしくて顔ごと背けた。影山が色っぽく成長してるなんて、聞いてない……。
「二口、シャツ頼む」
「おう。……てかよ七世、お前何照れてんの?」
きっとニヤニヤしてるだろう堅治の声。視線が私に集まるのがわかる。
恐る恐る影山に視線を戻してみると、真っ直ぐに私のことを見下ろしていた。
「七世」
「え、名前呼び?」
覚くんのささやかな疑問を無視するように、影山は言ってのける。
「俺の裸ぐらい何回も見てるだろ」
そう衝撃発言だけを残して、海の方に歩きだした。