第2章 #02
なんでこんな所でSを発揮しようとしてくるのか……。覚えとけ堅治。
睨みつけるとさらに挑発的に返してくる。
「そんな9分の1の確率だろ。誰かが“妨害”でもしない限り簡単に負けないから」
「!」
「はあ……」
研磨がため息をつく。
え、妨害については黙認なの……?私本当にやりたくないんだけど。
妨害ルールに唖然としているうちに、ゲームが始まる方向に動き出す。本気でするつもりみたいだ。
良識人だと思ってた研磨と京治の存在が遠くに感じる。……良識って何。女子を過酷な罰ゲームが待つ遊びに参加させても黙認することなのか。
勝手に良識認定したのは私だけど、この中じゃ確かにまともだったはずだよね。
「おーい、準備いいか」
「……っ」
「七世。あんまり反対しない方がいいよ」
腹を括りきれない私の隣で、研磨はまた起伏のない声で言った。罰ゲームの内容とか凄く嫌いそうなのに、私と違って全然落ち着いてる。
どうして……?
研磨の瞳がサッとこちらをとらえて、またロウソクの方に戻っていく。
「クロと覚…あと堅治。めちゃくちゃ性格悪いから。拒否したら無理やり罰ゲームさせられる」
「ひど……」
チラッと視線を堅治に向ける。「なんで俺?」って不服そうに返されると、なんとなくとしか言えない。
ていうか黒尾さんや覚くんと並べて名前を挙げられるほど問題児だったのか堅治……。
でも今はそれどころじゃない。
……やらなきゃなのかな。やるならやるで落ち着かないと。
「……ふぅ」
「もし邪魔されそうになったら、それより先に相手のを…落とせばいい。守りだけに徹することは、無いよ」
研磨……。本当にいい人だなあ。
そっか、邪魔されたら私もし返せばいいだけか。邪魔してきた相手に容赦する必要なんてないからね。
一番落としやすい位置にいるのが特に妨害しなさそうな二人だから、考えてみれば安心できる位置にいるのかもしれないけど。
なんだか行けそうな気がしてきた。
「おっしゃ、それじゃ始めるぞ」
黒尾さんの合図で全員が線香花火を持つ利き手を前に差し出す。
差し出した拳が研磨と京治の拳に触れる。
どうにか緊張が強まる前に無事勝てますように……。そう願って、そっと皆に合わせて花火をロウソクから離した。
橙色の火の玉が少しずつ伝って上がる。