第2章 #02
研磨の隣を歩くことしばらく。着いたのは今日二回目の海だった。
まあ、方向からして予想はしてたけど。
水平線を探して海に目を向ければ、そこは真っ暗な世界が広がっているだけ。月明かりさえ飲み込んだような黒の世界。
空との境目はほとんど消えてしまっていた。
怖い。昼間とは全く違う姿をしてる。
今溺れてしまったら、きっと助からないんだろう……。
「うっし、此処でするか」
黒尾さんが言う。
適当に返事をしながら、砂浜の上で数人が花火を袋から出して準備し始める。貴大さんはサボってるのが見つかって、英太さんに水汲みをさせられていた。
波打ち際に歩いていく貴大さんがなんとなく気になって、私はゆっくり走りながら後を追う。
「誰?」
「あ、私です」
暗い足元をスマホのライトで照らすと、貴大さんは反射して私の方を振り返った。
貴大さんの足元は既に波が満ち干きするところまで到達していて、濡れてしまってる。
私が光を当てた状態で、バケツで一気に海水を掬う。
「ありがとな」
「ううん。勝手に来ただけだし」
「重いな、こんないらねーかな」
半分ぐらい海水をドバっと戻すと、水が跳ねて貴大さんに少しかかる。
「おわっ」って驚く貴大さんがおかしくて少し笑えば、貴大さんも小さな声で笑った。
皆の元に戻る最中で密かに思った。貴大さんは一人で暗いところに行かされても抵抗もなしなのだろうか。
女子だけだったらきっと怖くて誰かを連れて行こうとするけど。これも男子と女子の違いなのかな。
私がいるだけでも少しは心強いんじゃないかと思って来たけど、案外意味がなかったのかもしれない。
集団に戻ってくると既に準備はしてあって、ちょうどロウソクにライターで火をつけているところだった。
黒尾さんってなんだかチャッカマンよりライターの方が似合うよね……。
「お疲れ」
「はいよ」
頼んだ本人の英太さんがそう言って笑えば、貴大さんは何も言えない様子で呆れながら笑った。
もうサボりませんよ、なんて声が聞こえてきそうな表情だ。
「ん」
「……?あ、ありがと」
真横からただ一言籠った声で言われて、見てみると影山が花火を一本私に突き出していた。
影山がここまで親切って私感謝されるようなことしたかな?
お礼を言うと影山は目線を合わせずに「おう」とだけ。