第2章 #02
無愛想なのは中学の頃と変わらず、か。懐かしいな。
火がしっかりついたみたいで、順番に花火をつけ始めた。
シュー……
細くて色の付いた光の線が、真っ直ぐがちな放物線を描いて砂浜にポチポチと落ちていく。
燃えるのと一緒に立ち上り始めた煙が臭い。花火ってこんな匂いだったなあ。
「綺麗だね」
「炎色反応だな」
隣にいた堅治に感想を言ってみる。すると想像していなかった返答が来て、私は首を傾げた。
エンショク反応……?
わかっていない私を見て、得意げに、ほんの少し馬鹿にした様子で堅治は口角を上げてみせた。
夜に花火の光が当たってるだけで、さすがカッコイイ人は様になるな。……表情はいただけないけど。
「もう少し化学勉強したら?」
「まだ一年だから…!しかも夏!習ってないの!」
「ほんとかよ」
「まあ気を落とさなくていいよ。俺の知り合いに三年になっても炎色反応知らない人いるから」
堅治と反対の隣に京治が来て、またスッキリとして落ち着いた声で言った。「ああな」って今風な言葉で共感を口にする堅治。
堅治も知ってる人なのか。
なんとなく、遠回しに黒尾さんを揶揄ってるのかと思ったけど。特に真意には興味がなくて聞かない。
黒尾さん女たらしで頭が悪いようだったら救いようないな……。
花火が終わったらバケツに突っ込んで、また新しい花火に火をつける。
「色が違うのもエンショク反応ですか?堅治先輩」
「その呼び方なんだよ」
わざとらしく先輩呼びをして、得意気に語っていらっしゃったエンショク反応について聞いてみる。
ふざけてみたつもりが、堅治は「なんだお前……」というふうな目で私を見た。先輩呼びが気に食わなかったかな?
もう一度尋ねようとすれば、慌てて阻止されてしまった。呆れ顔で笑う堅治によると、もうそのふざけ方はいらないってところかな。
「京治先輩はわかりますか?」
「二口よりはね」
「ッチ……、頭いいからって生意気だよなお前」
「褒めてくれてありがとう」
へえ、京治は頭がいいんだ。それに堅治にこの返し方……。
伊達にあの二人の手綱を握れるって言われてるわけじゃないみたいだ。
堅治がイラッとして京治の頬を引っ張れば、流石に京治も困惑してた。もしかしたらこの二人の力関係って、結構近い位置にあるのかもしれない。