第2章 #02
研磨は私が来ない方に予想してたのかな。
だとしたら間違いなくその原因は、今得意げな顔をしている黒尾さんと覚くんに違いないだろう。
研磨が来て欲しくないと思ってる線について思いつかないのは、一方的に信頼を置いてるからかもしれない。
「ほんの少し待ってて貰えますか?」
「おう」
扉を開けたままにして、おばあちゃんに確認しに行く。時間は八時を少し過ぎた頃だった。
相手が今日の昼に会った子達だと伝えると、あんまり遅くなりすぎないようにって注意だけで、すぐに頷いてくれた。
部屋に戻って少しは気を使った服装に着替える。……昼のはさすがに手抜きしすぎたというか。まあ、同年代に会わない想定の服装だったし。
ショートパンツと袖にレース模様の入ったトップス。持ってきた服の中でも適度な可愛さのを選んだ。
好きな人に対してならまだしも、男の前だからって気合いを入れて可愛いのを選ぶ女豹にだけはないたくない……。
脱ぎ捨てたパジャマを見て、あの二人に寝る時の格好で対応しちゃったことに気づいた。もこもことか派手なタイプでは全然ないんだけどさ。
薄手のパーカーを羽織ってポケットにスマホだけを突っ込んだ。他には特に考えずに、玄関に軽く駆け足で戻った。
「お待たせしました」
「行こうぜ」
サンダルに足を通しながらちょっと慌て気味に頷く。一応待たせちゃってるし。
「慌てんなって」
「はい……バケツは大丈夫ですか?」
立ち上がった時に視界の中に入ってきた玄関のバケツ。そもそも此処の人間じゃない人達なら、バケツをどこで用意できるんだろう?
黒尾さんは思い出したようにハッとすると研磨と顔を見合わせた。研磨が黒尾さんに頷いてみせたことから、持ってないんだなって確信した。
「ごめん忘れてた。七世の家の、借りてもいい?」
「たぶん大丈夫だよ。……おばあちゃん!玄関のバケツ借りてくね!」
サンダルを履いたまま廊下に膝を立てて、身を乗り出すようにして大きな声で言う。
すぐに「いいよ〜」とおばあちゃんの声が聞こえた。
バケツの中から軍手とシャベルを取り出して、バケツのあった位置に置いておく。普段は花壇のお世話をする時にでも使ってるのかな?
バケツを持って外に出ると、研磨がスっとそれを代わりに持ってくれた。