第2章 #02
ご飯を食べながら、おばあちゃんは私に今日のことを尋ねた。
「どんな魚が釣れた?」
「種類はよくわかんないけど、小さめの。山下さんは大きいの釣ってたよ」
「へぇ」
「あとね、中学の友達とその友達と偶然会ったんだけど、それも楽しかった」
「宮城のかい?よかったねえ」
ここはちょっと暇だからねえ、って。
まあ、暇といえば暇……否定はできない。明日からまた海に行くってなっても、今日に比べたら静かで何も無い時間を過ごすだけなんだろうな。
かといって他にすることは無いし、あそこから海を見るのは一番心が休まる……いろいろと忘れられるから。
シャワーを浴び終えてテレビを見ていると、玄関の扉がガンガンガンとノックされる音。
インターホンがないから、大抵近所の人はノックせずに勝手に開けて「こんばんは」なんて玄関に入ってくる。
近所の人じゃないみたい……?
風が強い日におばあちゃんの家に来た時もそんな音で扉が鳴ってたけど、特にそんな天気悪くないしな。
「見てくるね」
「ありがとう」
おばあちゃんに用事がある人だったら二度手間なんだけど、ちょっとでも代わりに何かしてあげたいというか。
玄関の灯りをつけて、ガラガラと戸をひいた。
「……!?」
そこにいた人物に思わず戸を閉めようとすると、素早く足と手が入り込んできてそれを阻止した。
「おいおい閉めんなって」
「黒尾さん…なんでいるんですか」
力適わず扉を開けられてしまう。そこには、ニヤニヤと笑顔を見せる黒尾さんと、面倒くさそうに視線を逸らして突っ立ってる研磨の姿があった。
研磨に聞いたわけか。
「研磨に場所聞いた。今から花火するんだけど、一緒に来ねえか?」
「花火ですか?」
「そ」
黒尾さんは若干横にずれると、私からも見えるようになった後ろの方を親指でさした。
おばあちゃんの家は表札がある門から玄関までの距離が長い。七メートルほど先のそこに、他の六人がいるのが見えた。
既に外は暗いけど、覚くんらしき人物が大量の花火を抱えて手を振ってるのがわかる。
誘ってもらえたのが純粋に嬉しくて、黒尾さんに対する警戒心を忘れてしまう。
「いいんですか?」
「ほら、やっぱり来るって言ったろ?」
「……」
黒尾さんは研磨に対して、得意げに言ってみせた。研磨は黙ってる。