第1章 #01
「こいつこんな奴だから、あんま隙とか弱点見せない方がいいぞ」
「う、うん」
まさか影山からこの手の忠告を受ける日が来るとは……。
気をつけたいけど、隙とか弱点って自分で見つけるのは難しい。
しかもアカアシさんは優秀なところを堅治のネタにされてるわけだ。……いじるなら私の居ない所でやって、って願っておくしかないみたいだ。
少し話題を逸らして振ってみる。
「セットっていえば影山と堅治、よく一緒にいない?」
「こん中じゃ気が合う同士っつーか。女子みたいに面倒臭いのとは違うけど、大人数の時は自然と二人組みたいになんだよ」
八人だからちょうど割り切れるしね。
女子ほど面倒臭くないってことは、たとえ奇数でも余りが孤立するなんてこともないんだろうな。
堅治は黒尾と研磨は一緒にいることが多い、とか教えてくれた。
その時々で二人組はコロコロ変わるらしいけど、影山と堅治、研磨と幼馴染は圧倒的に多いペアみたいだ。
「あの二人、幼馴染なんだよね?」
「腐れ縁らしいーよ。あの人単品なら研磨が一番上手く扱えるんじゃね?かなり手馴れてるし熟練の技って感じ」
「へえ」
流石だな。そういえば、と海やお昼ご飯前の出来事を思い出して感心する。
そんな私を影山は意味ありげな表情で見つめている……けれど、あえて無視することにした。
「ま、だから逆を言えば研磨の扱いが一番上手いのも黒尾だけどな」
「意外……」
研磨が保護者みたいになってたし、その逆が通用するなんてまさかだった。
あれだけ性格がいい研磨に対して女たらしが扱い上手なんて、一体どの面での話をしてるんだろう。皆目検討もつかない。
私が信じきれないながらもジワジワ驚いていると、堅治は意外な切り返しをしてきた。
「それはこっちのセリフ」
「?」
「研磨が外に出るのついてったって話。もはや意外通り越して、信じられないんだけど。どうやったの?」
「は?それ本当か?」
「え……?」
「無駄に動くのが大っ嫌いなあいつが意味なしの散歩に付き合うなんて、黒尾相手でも絶対ないんだよ」
ご飯を食べる前の話だから、近くに座っていた堅治なら聞いてたかもしれない会話だけど。
……でも、本当に?研磨は嫌な顔をしながらも、案外すぐに出てきてくれたんだけど。
影山も有り得ないって驚いてるみたいだった。