第1章 #01
私の高校ではかっこいい男子は、顔が可愛い女の子としか喋らない陽キャしかいないし。
かっこいい人すなわち興味無い女子にはギスギスしてるみたいなイメージがついちゃってる。
高校の同級生とこの人はたぶん違う……と思うし、私の方が明らかにぎこちない対応するのは良くない。
私の一方的な違和感なんだ、隠さなきゃな……と思った。
「二口も宮城のやつ」
影山が話の最初の話題にそう言ってくれる。
「ん……?宮城じゃない人いるの?」
「聞いてないか。研磨と黒尾さん、あと赤葦が東京」
そういえば研磨が違う県の人もいるって言ってたっけ。
黒尾さんとは、研磨の幼馴染のことだろう。研磨がクロってばっかり言うから。その人のことを影山はさん付けしてるみたいだった。
「都会だね。アカアシさん…?はまだわかんないけど」
わかんないというか、お互いに自己紹介をしあってない。話してない人があと一人だけになったから必然的にどの人かはわかってる。
たしかクールそうな黒髪の人だった気がする。
影山は視線をパッと動かして、辺りを見渡した。今は洗車中でこの部屋にはいないみたいだった。
いるメンバー把握してたし、いないことはわかってたけど。
「後で紹介する」
「ありがと」
別にそこまでしなくても一応いいのかも……なんて、適当に感謝を口にする。
全員と等しく仲良くなるほど、私たちが関わり合う日数が沢山あるわけでもない。
それに全くの偏見だってことは重々承知で心の中では謝りはするけど、私の中でアカアシさんの見た目って堅治と一緒で喋る相手を選ぶイメージがあるんだよね……。
堅治は本当に偏見だったんだけどさ、ごめん。
「赤葦ぐらいだしな、天童と黒尾の暴走止めれんの。今居ないのも二人の手綱握るため」
ご愁傷さま、って言いながら堅治はほんの少し笑顔を見せる。二人の手綱を握るなんて出来たとしても、簡単な事じゃないはずだ。
その大変さを思ってこの顔。確実にS側の人間だな……。
影山も「お前隠せてないぞ」、とすかさずつっこんだ。堅治としてはわざとそういう一面を外に出した訳では無いらしい。にしても。
「あの二人がセットの時はもれなく赤葦がつくんだけど、ホント優秀って大変だよな」
なにこの明らかに楽しそうな心配。この人やばいのかも……って本当に思った。