第1章 #01
席について、もう一度テーブルに乗った料理を見渡す。美味しそう……本当に美味しそう。
魚類だけじゃなくてサラダや煮物、漬物まで沢山ある。
「こんなに沢山作ったんですか?ありがとうございます」
「違うんよ」
「そうなの、実は炊いてあるお米分けてもらう時にね、ついでに持ってけって皆さんお料理持ってきてくださって」
「そうなんですか!」
びっくり……この品数の理由はそれか。ご近所の方にも本当に感謝だ。後で名前を聞いてお礼言ってまわらないと。
他の人にいたっては私よりもこういったご近所の縁みたいなのに関わりがないらしくて、びっくりして固まってしまっている。
「さあ、冷めないうちに食べようかねえ。せっかく若者のために皆が分けてくれたんやから」
「う、ウッス!」
「マジかよすげぇな…」
全員で手を合わせて、いただきますの合掌。
私は目の前のお刺身をひとつとって、醤油に軽くつけてから口の中に運び込んだ。
んー……美味あっ!
新鮮な魚の美味しさは格別で、目を見開きながら山下さん夫妻を見た。二人は微笑ましそうに皆を順に見回している。
あちこちでも「美味い!」って声が沢山聞こえて、すごく嬉しそうだった。
「美味いかい?」
「うん…!!」
お刺身を咀嚼しながら頷く。本当に美味しすぎる。二人には感謝しかない。
たぶん今めったに出来ないレベルで目が輝いてるんじゃないかな私。
山下さんは満足そうに頷いて、いっぱい食べなと料理を指してくれた。
「研磨、美味しいね!」
「うん。かなり」
美味しそうに目を細める。
汁物、煮物も次々に食べていくと、やっぱり美味しいとしか言葉が出ないほど美味しかった。
それに山下さんや奥さん、近所の人達のご厚意や優しさを思うと胸の辺りがじんわりとあったかくなる。ありがたいなあ。
なんだか昔を思い出す。
「まあ…!」
「……!」
奥さんの小さな驚く声に視線を上げてみれば、周りの男どもの食いっぷりがびっくりするものだった。
隣が研磨だから気づかなかったけど、研磨以外の人達、めちゃくちゃ食べてる……!
あんなに沢山あった料理も凄いスピードでなくなっていて、皆いっぱい口の中に詰め込んではリスみたいにもぐもぐしてる。
そして次の料理に箸を伸ばすまでのスピードが尋常じゃなく速い。