第1章 #01
いいもの見ちゃったという風な表情は隠す気がないらしく、鼻歌でも聞こえてきそうだった。
「まあ男だし仕方ないよネ」
「……っ。今のは、私が悪いので…」
「おっきいんだし自信持ちなよ♪」
「!!」
それはいらない……!
悪気もなければ相手に下ネタを言ってる意識もないのか、デリカシーの欠けらも無い言葉を言い放つ覚くん。なんでそんな楽しそうに言えるんだ。
研磨みたいに軽く睨みをきかせる。気にしてなかった私が悪いとは言ったけども……!
ムカッとした私から逃げるように、長い腕で座布団を抱えながらそそくさと部屋を出ていく。コラ、隙間があるからって足で乱暴に襖開けるな!
私も隣の和室に戻って座布団を下ろすと、ちょうど長テーブルをふたつ運び込む奥さん達と倉庫から戻ってきた山下さん達の姿があった。
一、二、三、四、五、六、七、八……確かに十一人、よし。
テーブルに合わせて六と五で綺麗に座布団を並べる。親戚の集まりみたい。そう思うと、やっぱりこのメンバーでって言うのが不思議でならない。
わたしも本来影山しか知らないし、ここの家主と知り合いなのは私だけだし。
人の縁ってこうやって拡がってくんだろうか?
「飯は俺達が作るから、若い衆はそこでくつろいでてくれなあ」
「え、いいんスか」
「いいのいいの。お客さんなんだからゆっくり待ってて」
まあ実際手伝えるだけの料理スキルも持ち合わせてないだろうし。ここの奥さんのご飯すごく美味しいし。
二人が台所に向かったあと、皆は申し訳なさそうにしつつ各自ダラダラと座布団に座り始めた。
自然と空いてる座布団が私の席になる。山下さんと奥さんは揃って座るから私は……。
おっと……。
「七世ちゃんはここ!」
「……はあ」
よりによってなんでこの人の隣りなんだか。私が立ってる所から一番遠い端に座ってる覚くんの隣りにポツンと空いてる座布団があって、仕方なくそこに進む。
もう片方の隣は影山と仲良さげなかっこいい人で、その隣にはやっぱり影山がいた。この二人はよくセットで見る。
「えー、なんか七世ちゃん嫌がってね?」
わざと少し嫌そうにして座ると正面からそんな声。いや正面が貴方ってことも充分いやな理由だから。
真正面に座る研磨の幼馴染は、からかうように覚くんを笑っていた。