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【HQ】ひと夏の幻影【R18】

第1章 #01


それだけじゃなくて、突然押しかけたのにこんな大人数の分のご飯を作ることを快く了承してくれた奥さんも本当に凄い。

荷物を片付けに倉庫の方に向かう山下さんに数人がついていく。


「あら、七世ちゃん久しぶり!」

「こんにちは!」

「また綺麗になったんじゃない?」


知り合いや同年代が近くにいるところでお世辞を貰うといつもより恥ずかしくて、うつむき加減に首を振る。

なわけねーだろとか皆思ってそうで考えるのが怖い。これ以上のお世辞はやめてよ……?

念が伝わったというわけではないけど、奥さんは皆はこっちねと残った私達を家の中に通してくれた。……初めて会った男たちをこうも簡単に家に。

あたたかいといえばそうなんだけど、不用心っちゃ不用心だよなあ。本当にやばい人達が二人に近づくことがないように祈るばかりだ。


クーラーボックスは台所に置き、私たちは六畳間の和室ふたつが連なった大きな部屋に通された。間の襖を取り払ったらしく、横長で広々としたスペース。

廊下に面した方の障子も開け放たれていて、縁側の向こう側のちょっとした庭なんかが覗いている。

低木はときどき手入れをしているのか、葉っぱの部分が若干丸っぽい形をしていた。今更だけど、今日も相変わらず蝉が鳴いてるな。


「今テーブル出すからね」

「手伝います」

「っす」


部屋を出ていく奥さんに2,3人ついて行く。私は奥さんの指示を受けて隣の部屋から座布団を運ぶことになった。

覚くんがついてきてくれて、2人で隣の部屋に移った。さっきの部屋とは違って全面襖で遮られていて、昼間だけど薄暗い。

仏間であるこの部屋の隅っこの方には、二十ほどの座布団が三つぐらいに分けて積み上げられていた。


「覚くん、座布団いくついるかな」


とりあえず十はいるだろうと思って数えながら尋ねる。積み上げてある座布団を若干屈みながら、ひとつずつ横に下ろして積み上げる感じだ。


「ん、とね〜!俺らは八人だから七世ちゃんと、この家の二人で十一枚かな?」

「ありが、と…。……!」

「ありゃバレた?」


顔を上げた先にいた覚くんの視線に何か違和感を覚えて視線を下ろすと、Tシャツの首の辺りが屈んだせいで弛んで胸元が見えてしまっていた。

慌てて服を抑えると、覚くんはニヤニヤと笑いながら重ねた座布団を持った。
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