第1章 #01
「結構仲良いのか?」
「今は別に。中学までは同じだったけど、思春期というか男女であんまり喋らなくなって」
しかもとりわけ影山は女子と話さないタイプだったから。そのことについては喋ってないけど想像がつくらしく、英太さんも納得していた。
影山の後ろ姿を見てみる。今日最初に見た時に隣にいたカッコイイ青年とまた話しているようだった。
歩く姿を後ろから見ることはなかなか無いけど…やっぱり大きくなったなあ。
高い身長の影山の背中を見てそう思った。
身長と一緒に可愛らしさまで変わってしまってみたいだけどね。女子の輪に囲まれても平気でニコニコしてたあの頃の飛雄くんはどこへ行ったんだか。
覚くんが楽しそうに尋ねてくる。
「アイツモテてたの?」
「影山を好きな子は一定数いたような……まあ、あんなのだから仲良い女の子はいなかったと思いますけど」
「へぇ。それじゃたぶん童貞だネ!」
「ん……?」
覚くん、今なんて……?私の耳がおかしくなければ、女子高生に対して前ぶりも無くまさかの下ネタが飛んできたような気がするんだけど?
「あっれ〜、気にしないで七世ちゃん!いつもの癖でついネ!」
いや、ついじゃなくてさ……。
年頃の男の子だし下ネタは仕方ないと思うけど、女子のいる場で遠慮なしに言うのはさ……ね?
「サトリ……」
「研磨ゴメンゴメン!」
「こいつも下ネタ嫌いだからな」
「あー、孤爪にそういう系はな…」
軽く睨みつけるような半月型の目付きの研磨。英太さんと貴大さんも呆れるように覚くんを見た。
覚くん本人はというと下ネタを言ってから研磨に謝るまで楽しそうな顔のままで、もちろん反省してるようには見えない。
これも彼らにとっては日常茶飯事というやつなのかな。
「おっ、着いたみたいだな」
貴大さんが止まった前の集団に気づいた。山下さんの家だ。久しぶりに来たなあ。
山下さんが呼ぶと、中から割烹着を来た奥さんがパタパタと出てきた。
「あらまあまあ……」
「海にいた子らなんやけども、でかい魚釣ってくれたから連れてきたんやわ。いっぱい作ってもらえるか?」
「わかりました、ご近所さんからお米貰ってこないと」
上機嫌に奥さんが微笑む。お米をわけてくれるなんて、此処のご近所づきあいは相変わらず凄いな。