第1章 #01
不思議で慣れない感覚ながらも頷く。敬語がぽっと出ちゃいそうだな、そのうち。
「貴大さんと覚くんは同じ学校ですか?」
いや、そのうちと言わずもう出たけど。あ、と口を開けば別に敬語で喋っちゃった分には気にしなくてもいいよ?と二人は笑う。
貴大さんも覚くんも学校は違うらしい。ちなみに同じ学校なのは今いるメンバーでは覚くんともう一人、研磨とあの黒髪の人の二組だけだそう。
普段は他に来てないメンバーの中で同じ学校の人がいるらしいんだけどね。
「英太くん!」
「?」
覚くんが呼びかけると、前を歩いていた集団の数人が振り返ってそのうちの一人が首を傾げた。
あの人が覚くんと学校が同じ人……?ってことで今呼んでくれたのであってるよね。
私たちが追いつくまでストップして集団から遅れ出た彼は、いかにもクールそうな見た目をしていた。クーラーボックスを肩にかけてるから、きっといい人だって偏見から判断するけど。
いやだってこんなに大きい荷物率先して持つんだから、絶対いい人に違いない。パシられるタイプの人には見えないもん。
「どうした?」
「俺と同じ高校のメンバーってことで紹介しててサ。七世ちゃん、英太くん」
「よろしくお願いします、英太さん…」
「あ、おう……」
流れるようなスピードの紹介にお互いは喋ってないから、ぎこちない挨拶になってしまった。英太さんって勝手に呼び方決めちゃったけどよかったかな。
何も言われないから別にいいってことにしよう、うん。
英太さんはなんていうか自然なオシャレさんって感じの雰囲気が漂っていて、影山よりもラフな格好を着こなしていた。スタイルがいいし、スラッとしてる。
灰色に近いクリーム色の毛先が濃い色をしていて、その髪どうなってるの?ってあの黒髪の人の髪の次ぐらいに聞きたいけど、たぶんファッションだろうから口を出さないでおく。
「影山と知り合いだって?」
「あ、はい……」
「敬語は別にいいよ」
「ごめんなさっ……あ。さっきも言われたんだけど咄嗟だとやっぱり…」
それに皆がみんな初めて会った女にタメ口きかれても許せるとは限らないし、いちいち突っ込ませることにはなるけど最初は敬語で話した方がいいのかも……。
英太さんは、「まあ気にするな」って。言い方がやっぱりクールって感じがする。