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【HQ】ひと夏の幻影【R18】

第1章 #01


それから約30分ほどで釣りを切り上げて、山下さんの家に向かう。若い男がわんさかいて腹も減ってるだろうし、早めにお昼に向けて帰ろうとのこと。

初めて会ったばかりの、しかもこんな少し不良チックな青年たちにまで本当にいい人だ……。実際暴力を振るいそうな素振りがなければ、悪いことなんてしなさそうな人達だけどさ。

今だって山下さんの抱える荷物を皆して分担して持ってるし、楽しそうに話すその中には山下さんだって混ざってる。

今度釣りに挑戦したいって約束までしてるし。ていうか影山、あんたと友達いったいいつまでいるつもりなの……?

こんな何も無いところにただの陽キャとは思えないような青年たちがいたって暇だろう。純粋になんでここにいるのか、いつまでいるのか気になる。

聞くほどではないけど……。


影山の友達たちから遅れて後ろの方をちょこんと歩いていると、すぐ前にあの金髪の青年がいることに気づいた。彼も他の男達から数歩後ろを歩いてる。

お礼言わなくちゃ。

Tシャツの後ろの裾を軽く引っ張らせてもらう。ちょっと近寄って見てみると、なんだか細くて白い腕だった。

彼は表情を変えることなく振り返った。


「……なに」


小さな声でそう言う。歩幅を少し縮めて私の隣を歩き出す。

肌も白いし夏とか嫌いなのかな?彼は日差しから嫌そうに目を背けて気だるそうにしてる。

大きな目と目が合うと吸い込まれそうで、心臓がドクリと音を立てた。不気味とまでは言わないけど、日本の妖怪というか…呪い?魔法?なんかを使いそう。

蛇のようで狐のような、近づきがたい存在。ってのはあくまで見た目の話で、実際言葉を交わすときは普通の人間だ、ってちゃんと思ってる。

いや、めちゃくちゃ失礼だけどさ……。


「さっきはありがとうございました。助かりました」

「別にいいよ。どう見てもクロが悪いし、君が謝ることでもないでしょ」

「…ありがとうございます」


軽く頭を下げる。でも彼は気にする様子もなかった。


「………。でも君みたいな子も珍しいよ」

「?」

「クロを拒む女なんて久しぶりに見た。ていうか初めてかも」


ああ見えてもモテるんだよ、と意味がわからないと言いたげな声色で言う。

うん、わかる。あれがモテるのも拒まない女ばかりなのも意味がわからない。
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