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【HQ】ひと夏の幻影【R18】

第1章 #01


大声でやめてって言うことも振り払うことも出来ない。何より横にいる影山に、友達の腕が胸に触れてるなんて知られたら恥ずかしすぎる。

さり気なく腕をずらさせてもらおうとすれば、彼は筋肉をガチガチにしてまでそれを拒んだ。

1ミリも動かない!かったい……!


「……」


ニコッと無言で返してくる。こんな胡散臭い笑顔ができる人がいることに驚きだった。ていうかこの人胸触ってるの確信犯決定じゃん……!

こわいこわい、影山の友達怖すぎる……。ここは早いところさよならしなくちゃいけないみたい。よろしくなんて以ての外だ。

私も他の人に今の状況が気づかれないように、笑顔をべったり貼り付けて早口で返した。


「そうです七世です、重いので退いて貰えますか?」

「……」

「……」


無言で笑顔のぶつけ合いを続ける。ここで引くわけにはいかない。というか軽く犯罪なんだからお前が引け、って声を大にして言いたい。

絶対引かない、離せ。って強く思いながらついには睨みつけると、男は諦めたように手をパッと離して私から距離を置いた。

そして笑顔から一変、ダルそうな顔つきに変わると私に向かってため息を吐く。そして信じられない一言。


「つまんねえの」

「……!」


わ、っけ、が、わ、か、らん………!!!

勝手に肩組んで胸触っておいて、それを許容してくれなかったらつまんない奴になるの?それで笑顔から一変私が悪いみたいな顔してくるの?

ふざけてる……!

こればっかりは腹が立つのを隠せず、この男を海に突き落としてやろうかと思った時だった。


ーーーペシコンッ!!!


「ってえな!何すんだよ研磨!」

「最低なのクロの方だけど。この子、そういう子じゃないと思うし、つまんないとかクロが言う権利ないよ」


え……?

しゃがみこんでいた男の頭を、この中では背丈の小さな金髪プリン頭の青年が引っぱたいた。猫みたいな見た目で不思議な雰囲気だった。

ガチ喧嘩と言うよりはじゃれ合ってるように見えて、普段から金髪の彼がこの男の制止役なのが伺える。

でも金髪の彼の軽い注意と引っぱたいてくれたおかげで、言いたかったことはひとまず言って貰えた感じがしてスッキリした。

この男の怒りの矛先が私に向くんじゃないか、すごく怖いけれども……。彼の近くにいる限り、多分大丈夫だろう。
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