第1章 令和のシャーロック・ホームズに
高校の入学式当日、満開になった桜の花びらが舞う道を、憂鬱気味な気持ちで歩く。
「きゃー!礼ちゃんやっぱりセーラー似合う!江古田にして正解ね!」
「ほんと、さすがユキちゃんの娘ね!可愛い〜!」
江古田高校はどんなところかな?友だちできるかな?とか、普通入学式当日は楽しみと緊張でいっぱいになるはずも、朝早くからテンションの高い2人に挟まれると憂鬱になるのは、恐らく私だけではないはず。
「千影さんもお母さんも、褒めてくれるのはありがたいけど、ちょっと落ち着いて……」
「何言ってるのよ礼ちゃん!今日は初日なんだから気合い入れて行かなきゃ!」
「そうそう!それに、久々に快斗と会うでしょ?3年ぶりだっけ?」
「快斗くんはさらに男前になってるでしょうね〜。なんせチカちゃんと盗一さんの息子だもの!」
「やだ何言ってるのよ、ユキちゃん!快斗なんて、礼ちゃんがこんなに可愛くなってて惚れ直しちゃうわよ〜きっと!」
「やだぁ〜チカちゃんったら!でも、そしたら2人は結婚してチカちゃんと身内になるのね!楽しみ〜」
「ハハハ…」
江古田高校も近くなり、だんだん人が増えてきているにも関わらず、マシンガントークを続ける2人。
周りの人たちは2人のテンションの高さに驚いているのか、チラチラこちらを見ているのがわかる。
周りからの視線に耐えられない私は、きゃいきゃい騒いでる2人から離れたい一心で歩くペースを落とし、そっとため息をついた。