第1章 令和のシャーロック・ホームズに
「おいおいおい…それ、本気だったのかよ」
「だって、ロサンゼルスの中学校は私服だったから、高校で着なかったら今後セーラー服着る機会ないし…」
「ま、まぁな…」
さすがのお兄ちゃんも、それ以上は聞かないでいてくれた。
さすが工藤有希子の娘、実のお兄ちゃんも私の嘘を見抜けない演技力!
…というよりは、呆れてモノも言えない、の方が表現として正しいのかもしれない。
「あ、博士!あの駅前で大丈夫だよ」
「なんじゃ、礼君の家まで送っていくぞ?」
「ありがとう。でも、駅から家までの道の雰囲気も見ておきたいし」
それなら…と駅前で車を停めてくれた博士にもう一度お礼を言い車を降りる。
「それじゃあお兄ちゃん、家の片付けとかでしばらくバタバタするから、落ち着いたら会いに行くって蘭と園子に伝えてて?」
「…はぁ。オメー本当に一人暮らしするんだな。こっち帰ってくると思ってたのに」
物騒だから鍵はちゃんと締めろよ?夜はインターフォン鳴っても出るなよ?それから…と、お兄ちゃんの話が長引きそうになったので、慌ててお兄ちゃんの言葉を遮る。
「わ、わかってるよ!あ、入学式、お兄ちゃんのとこはお父さんが行くって言ってたから!」
長いこと路駐してると迷惑になっちゃうから、と出発を促すと、何かあったらすぐ連絡するんじゃぞ、と言って博士は再び車を走らせた。
──ごめんね、お兄ちゃん。
小さくなっていく車を見送りながら、一人呟いた。