第1章 令和のシャーロック・ホームズに
駐車場までの道のりで互いの近況報告を終えた私たちは、車内ではシャーロック・ホームズの話で盛り上がっていた。
…主にお兄ちゃんが。
相変わらずのシャーロキアン具合……
尽きることなくずっとホームズの話をしてるお兄ちゃんを見る。
「お兄ちゃんってば相変わらずホームズ好きなんだねぇ」
「…ったりめぇだろ?コナン・ドイルの生み出したシャーロック・ホームズは、世界最高の名探偵!俺はそんな探偵になりたいんだ。令和のシャーロック・ホームズにな!」
「お兄ちゃんならなれると思うけど、危険な事には首突っ込みすぎないようにしてよ?」
「わかってるよ。…そういえば、なんで礼は帝丹にしなかったんだよ?〝あの子ったら相談もなしに決めちゃってー!〟って園子が怒ってたぜ?」
…げ。これはどこかで園子に説教されるかもなぁ。高校で園子好みのイケメンを見つけなきゃ……
園子と会うのはそれからにしよう。うん、そうしよう。
「蘭も園子もお兄ちゃんも帝丹だから、帝丹に行こうと思ってたんだけどね。セーラー服が着たくて……」
ようやっとホームズから別の話になったとはいえ、この話はあまり突っ込まないで欲しい内容なわけで。
深く突っ込まれないような言い訳を考えに考えた結果、セーラー服が着たかった、というどこから突っ込めばいいのかもはや自分でもわからない言い訳を思いついたのがつい数日前のこと。
帰国前最後のSkypeでお兄ちゃんだけにはとりあえず伝えたけど、きっとお兄ちゃんから蘭と園子には伝わってるんだろう。
そんな我ながらなんとも苦しい言い訳に、心の中で苦笑いをする。