第1章 令和のシャーロック・ホームズに
高校の入学式を来週に控え、私は3年振りに日本へ帰ってきた。
「あーーー、肩こる…どこでもドアがあれば10時間も飛行機乗らなくていいのに…」
「オメーその歳で肩こるはねーだろ…」
スーツケースを片手に空港内を歩きながら、独り言にしては大きめの声で呟いた言葉に返事がきて、思わずビクッと肩が揺れる。
足を止め振り返ると、呆れた顔をした工藤新一も歩みを止めた。
「お兄ちゃん!!ただいまっ…」
独り言のつもりで呟いた言葉に返事をした工藤新一に抱きつくと、危ねぇだろ…と言いながらも受け止めてくれる。
「えへへ、ごめんごめん。久しぶりだから嬉しくて!お兄ちゃん一段とかっこよくなったね」
「礼は変わらねーな…」
「うそ!3年ぶりだよ!?今いくつだと思ってるの…」
お兄ちゃんの首に回していた手を解きジト目を向けると、冗談だよ、と笑って頭を撫でられた。
ほら、荷物貸してみ?とスーツケースを転がし歩き始めたお兄ちゃんの横に並び、駐車場を目指して歩く。
「博士は元気ー?」
「相変わらずたまに家が爆破してるぜ?」
この3年間、離れて暮らしていたとはいえSkypeでやり取りしていたにも関わらず、お兄ちゃんとの話は尽きることなく、お互いの近況報告をしている間に駐車場へ着く。
世の中は春休みということもあり空港も駐車場も混んでいる中、見渡す限りで黄色い車は、阿笠博士の愛車のビートルのみだった。
「おお、礼君、久しぶりじゃのー!」
「わざわざ空港までありがとう、博士」
長時間のフライトのあと、スーツケースを持って電車に乗るのは疲れるだろうと空港に迎えに来ることを自ら提案してくれたらしい博士にお礼を伝え、車に乗り込んだ。