第18章 それぞれの想い
そう聞こえるとしばらくして、部屋からエルヴィンが出てきた。
「なんだリヴァイ、ずっと聞いていたのか」
「あぁ。放っておいた俺の責任もあるからな。エマは誰にやられたか言わねぇのか」
「そのようだな。私としては正当に裁きを受けさせたいところだが、本人が頑なに黙っている以上動きようが無い」
敢えて話には出さなかったが、エルヴィンがエルヴィン・スミス個人としての感情を吐露したところを初めて聞いた。
改めてエルヴィンにとってエマが他の兵士と同等でないことに気付かされた。
エマがその事に気付いているかどうかはわからないが。
そうして小声で話していると医師が緊急避妊薬を持ってきた。睡眠薬と併せて飲ませるのでまた数時間眠りにつくようだ。
緊急避妊薬は水銀を含んでおり、副作用がある。
下手すると命に関わる可能性もあるので、気軽に服用できるシロモノでは無い。
エマは自分の身体よりも兵士としての道を選んだ。
それにしてもエマだ。
そこまでして、何故犯人を庇う。
俺に一言言えばそいつの首なんかすぐに目の前に差し出してやるというのに。
エマが眠りについた頃を見計らい、自室に入った。
エマが目を覚ます前に出て行けばいい。
今はただ側にいてやりたいと思った。